中国EC業界┃EC大手3社の戦略激変:成長率の鈍化とコスト削減は鍵になるか?

中国EC業界┃EC大手3社の戦略激変:成長率の鈍化とコスト削減は鍵になるか?

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財務報告書により、中国国内大手EC会社(アリババ、JD.com、拼多多)は急速な成長率より、商品品質と市場安定性、リスクへの耐性を求めていると伺えます。それに、経済循環を通じてコスト削減と効率を向上することは今後中国EC業界の傾向となります。さらに、大手3社のみならず、EC業界でのトラフィック競争は終わらず、これからは各会社の内部の強さの勝負になると考えられます。catalyst-crossing編集部が中国現地メディアの記事を日本語でお伝えします。

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要点:

1)3 社の財務ポイントは様々数値に反映されている: 現在アリババ社は市場の安定化、商品品質の向上を追求することにより、収益規模、収益性、ユーザー人数は依然として優位を保っている; 京東商城 (JD.com)は物流の相互取引を強化し、そしてサプライチェーンインフラの構築による、ビジネスの強化、経済サイクルと環境リスクへの耐性;拼多多(ピンドゥオドゥオ)はマーケティングプロモーションコストを削減し、研究開発と農業需要の持続可能な成長に多額の投資を行うことで、農業戦略を強調しています。

2)3社の収益は成長を維持しているものの、成長率は大幅に鈍化しており、アクティブ ユーザー数は三社とも増加していますが、四半期の成長率は鈍化し始めています。 Eコマースプラットフォーム全体は「トラフィックの時代」から「ボリュームリテンションの時代」に移行しているとわかります。

 過去2週間で、アリババ、JD.com、拼多多と3つの中国国内大手EC会社は、2022年3月31日時点による新しい四半期財務報告書を相次いで発表した。決算報告が発表された後、同社の株価は急騰した。新型コロナウイルスの影響を受けているものの、市場予想に比べて全体としては3社の業績が比較的楽観的であり、コスト削減と効率改善で大きな成果を上げているとみられる。

 2022年には、3月以来様々な場所でコロナ感染症が再燃しており、特に上海、深セン、北京などの大都会では新型コロナウイルス感染症による深刻な影響を受けており、EC企業に大きな課題をもたらしている。リスクと不確実性が増大しつつ、期待が低下する市場環境の中で、大手EC会社はコスト削減と効率性の向上を図り、急成長の段階に別れを告げ、長期的で安定した発展方向を求め始めている。

急速な成長率より、商品品質と市場安定性、リスクへの耐性を求める

 過去四半期では、前年同期と比較して、拼多多の収益は 7% 増加し、JD.com の収益は 18% 増加し、アリババ の収益は 9% 増加しました。全体として、三社の収益は成長を維持していますが、成長率は大幅に低下しているとわかります。そのうち、JD.com は主に自社運営ブランドの優位性を活かして二桁成長を続けていますが、成長率は20%未満に低下しており、アリババと拼多多の成長率は二桁未満に落ち込んでいるとみられます。

 2022会計年度(2021年4月)以降、アリババの収益成長は鈍化して安定し始めています。業界全体が追求する高度成長モデルが「高速」から「高品質」へ移行する中、能力構築と価値創造はアリババの新たな発展エンジンとなりつつある。

 拼多多 は過去の一定期間中、開発戦略を調整し、研究開発と農業への投資に重点を置くことで、長期的で質の高い発展を期待しています。短期的には、この発展方向の調整はまだ効果が見えず、成長率にもある程度の影響が出るだろう。

 売上高の伸びが鈍化する一方で、大手EC3社のうち、純利益が大幅に減少した企業もあれば、収益性が改善した企業もあれば、赤字が続いている企業もある。

 米国会計基準に基づいて計算されていないため、今季のアリババの純利益は前年同期比24%減少し、市場予想を下回った。アリババの今季の営業利益は主にタオツァイツァイとタオバオへの投資増加に加えて、新型コロナウイルス流行の影響やサン・アート・リテールの資産の減損引当金により、前年同期と比べて大幅に減少したとわかります。

 拼多多においては、純利益は市場予想を上回る42億400万元になり、前年同期の純損失は18億9300万元であった。 拼多多は 2021 年第 2 四半期から 4 四半期連続で利益を上げています。

 JD.com に関しては、インフラストラクチャ、技術研究開発、従業員の報酬と福利厚生への継続的な投資、新型コロナウイルス感染症との闘い中に上海とその他の地域への需要供給を確保し、および感染症の影響を軽減するためにビジネスパートナーへの支援、そして商品を値下げして消費者に売ることにより、JD.comは赤字状態が続いており、純損失は30億元となったが、前年同期の純利益は36億元で、赤字幅は前年同期に比べて縮小したとわかりました。

 年間アクティブバイヤー数から判断すると、アリババ、JD.com、拼多多はいずれも高度成長時代に別れを告げ、安定期に入ったと思われます。

 過去四半期、アリババの中国での年間アクティブユーザーは初めて10億人を突破し、拼多多の年間アクティブユーザーは8億8,190万人、JD.comのアクティブユーザーは5億8,050万人となった。今季の純増数から判断すると、アリババは依然として第 1 位であり、拼多多の純増数は 1,300 万となり、JD.comより1,000万を上回っているとわかりました。

 拼多多のCEO、Chen Lei 氏は決算説明会で、現在拼多多の要は従来既存の8億8,000万ユーザーへのサービス向上にあり、拼多多は現在のユーザー規模数に達しており、当社がいつまでも急速な成長率を維持することを期待する人はいないだろうと指摘しました。

 一般的に、大手EC 3 社は現在の規模に達しており、無限に成長することはなく、市場密度が一定のレベルに達すると、市場の反応が鈍化するのは当然の結果です。

 同時に、新型コロナウイルス感染症の影響で消費者は収入に対する自信を失い、全体的な消費状況は比較的低迷しているとみられます。統計局が4月に発表したデータによると、高額商品の消費力は弱く、トラフィックや利用者数がプラス増加しているにもかかわらず、4月と5月の客単価は前年同月比で落ちているとわかりました。

経済循環を通じてコスト削減と効率向上へ

 3つの財務報告書から判断すると、コスト削減と効率化はインターネット企業の共通の生存戦略となっており、この1年間はEC企業の主題でもありました。

 過去四半期で、アリババの総経費支出は前年度同期比で 30% 減少しました。様々な支出が程度の差はあれ縮小したとみられます。その中で、総収益に占める製品開発費の割合は7%から5%になり、販売促進費を含むマーケティング予算支出は前年同期比で20億5000万元近く減少し、株式報酬費用は49億元くらい減少した。 

 アリババの管理層は決算報告オンライン会議で、コストの最適化に関して、アリババグループとしては来年も引き続きコスト削減と効率性の向上に取り組むと指摘し、そして最も重要な任務は業務効率の向上とコスト削減であり、同時にキャッシュフローと収益の確保、現金残高の管理であると述べた。具体的には、事業レベルでは業務閉鎖や合併の場合、長期的な価値が明らかでない一部の事業は廃止され、事業の異なる性質に応じて、具体的なコスト削減目標と要件が提言されます。アリババグループにおいては、マーケティング予算支出などのコストを比較的厳格に管理しており、現段階では特定の事業への支出を削減する可能性もありますと述べました。

 拼多多はマーケティング予算を前年比14%削減し、収益に占めるマーケティング予算の割合は 2021年の同時期の59%から、さらに47%に減少しました。しかし、研究開発費は20%増加し、過去最高記録となりました。

 JD.com は過去数四半期、低利益率経営を続けている。今期においては、支出のうち最も大きな割合を占めるフルフィルメントサービス料金とマーケティング予算が増加しましたが、研究開発費は減少しました。JD.comは今年3月から、新たなコスト管理策をさらに導入し、その効果は今後数四半期の収益やキャッシュフローなどの財務データに反映される予定となります。

 全体として、ECプラットフォーム3社はもはや単一な指標の急速な成長を求めるのではなく、ビジネス全体の健全性と持続可能性に焦点を当てており、運営を洗練する段階に入っています。

トラフィック競争は終わらず、内部の強さは勝負になる

 競争という面では、ECプラットフォーム3社はもう激しい競争を行わず、補助金に依存するなど、トラフィックベースの大規模な成長手法を徐々に離れ、その代わりに戦線を縮小し、内部の力への育成に重点を置いていきます。

 JD.comは過去数年間、物流とサプライチェーンインフラへの投資により、感染症流行などの環境下での環境リスクに抵抗する能力に優位性をもたらしており、景気循環をうまく乗り切り、この投資は今後も継続されると思われます。

 低層市場からスタートしたECプラットフォームとして、拼多多は差別化されたルートを見つけました。過去 1 年間ほどにわたって、農業分野に多額の投資を行い、「百億農業研究プロジェクト」を設立し、数百億の利益を継続的にこのプロジェクトに投資してきました。拼多多は農業戦略を重視し、マーケティング予算を削減し、研究開発と農産物物流に多額の投資を行うことで、新たな発展の道を模索し続けています。

 アリババの収益性は大幅に低下しており、リスク耐性の向上に注力しています。収益規模、収益性、ユーザー規模で優位に立つアリババにとっては、市場環境を安定させ、加盟店の成長を支援し、成長安定期に入る際に、EC事業以外の成長余地のある事業の展開を促進します。さらに、今四半期では、アリババクラウド事業は初めて年間黒字を達成し、国際事業なども大きな期待を集めました。

 さらに、ECプラットフォーム3社は、Tiktokと快手(Kuaishou)との競争に直面しています。

 今年3月、快手ECはエコロジー構築の効果を強化するため、サードパーティのECプラットフォームと快手との協力協定の変更により、 3月1日から快手ECはタオバオとJD.comとの製品リンク提携を解除すると発表しました。これにより、JD.comとアリババからの販売者・販売店舗が快手ECへの誘致を加速され、一定の転換効果が生まれました。快手の第 1 四半期データから、快手の販売店舗はECプラットフォームのGMV (流通取引総額)に99%以上貢献できたとみられます。

 新たな競争に直面しているECプラットフォームは、常に革新を求めています。たとえば、拼多多はショートビデオへの投資を全力的に増やしており、前日にはショートビデオをエントリーレベルの優位枠に置き、ユーザーを惹きつけられ、顧客維持率を高めるために、ビデオを視聴して現金や金貨を獲得する方法を導入しました。しかし、その転換率と効果はまだ検証されていません。

 如何にして市場安定を維持すると同時に、事業の革新を続けていくかということが、EC大手3社が考え続けている課題となります。

 一方で、小売業界における複数形態が共存するという特徴は、EC業界の競争が継続していき、トラフィック競争の裏側でEC市場はより統合化・多様化して発展していくと考えられます。

元記事:电商三巨头策略生变:增速全员放缓,降本才是主旋律?

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