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はじめに

近年、「推し活旅行」は中国の若年層で急速に人気を集める新しい旅行スタイルとなっている。従来の観光旅行とは異なり、推し活旅行は単なる観光スポットの見学にとどまらず、アイドルと同じ空間を共有することで得られる感情的なつながりが重視される。一線都市である北京や上海のコンサートから、地方都市でのファンミーティングや音楽フェスティバルに至るまで、推し活旅行は中国各地で広まりを見せ、都市部には大きな経済的効果をもたらしている。

コンサート経済による地方観光の促進

2023年以降、コンサートは全国各地で欠かせない文化観光イベントとなり、チケットが即完売することは珍しくなく、「今年はコンサートに一度も行けなかった」といったジョークも若者の間でよく聞かれる。道略音楽産業研究所が発表した『2024年上半期中国コンサートレポート』（以下「レポート」）によれば、2024年上半期には3000席以上の規模で行われたコンサートが874公演を数え、観客数は1,192万人に上った。都市部で開催される大規模コンサートは、地元経済に大きな影響を与える。多くのファンが遠方からアイドルを応援するため、宿泊施設の需要が増加し、ホテルや飲食業界における観光消費が直接的に促進される結果となった。2024年上半期の全国のコンサート収益は1,000億元を超え、榆林や貴陽といった都市はコンサートを活用して観光ブランドの認知度向上に成功している。

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コンサートと商業施設の連動による消費促進効果

スターのコンサートと商業施設のコラボレーションは新たな消費促進のトレンドとなりつつある。著名アーティスト周杰倫（Jay Chou）の上海での4日間にわたるコンサートでは、10万人以上の観客が来場し、上海市のホテル検索数が全国上位3位に浮上、ホテル予約数も前月比で80％増加した。周辺のホテルは数日前から満室が続き、コンサートと同時開催された「周同学」ポップアップストアは中国のSNS「小紅書（RED）」で話題となり、ファンの熱意を消費に結びつける成功事例となった。このようなコンサートと商業施設の連携は、宿泊や飲食などの観光消費を大いに促進し、ファンが感情的なつながりを持てる空間を提供することで、イベントの余韻を地域全体に波及させる効果がある。また、コンサートに行くファンだけでなく、筆者のようにチケットを手に入れられなかった残念な思いを抱えながらも、商業エリアのポップアップストアを通りかかった際には、思わず立ち寄って消費する人も少なくない。その他、営業時間の延長やシャトルバスの運行など、周辺サービスの充実によってリピート率が高まり、コンサート熱が都市全体の観光業や商業エリアに波及する。

まとめ

「推し活旅行」は中国の若者の多様で個性的な旅行スタイルを反映しており、ファンの間で都市を越えた新たなブームを巻き起こしている。今後、各都市が観光施設の整備や観光商品をさらに充実させることで、「推し活旅行」のポテンシャルはさらに高まるだろう。若者にとって推し活旅行は、アイドルとの対面を超え、都市文化や独自体験、ファンコミュニティとの共鳴を含む深い融合の場となっており、今後、ファン経済を活用した差別化された商業モデルがさらに広がり、商業エリアのブランド価値と文化発信力が一層高まることが期待される。