中国インバウンドの回復の見通しと今後必要となる事業戦略とは?

中国インバウンドの回復の見通しと今後必要となる事業戦略とは?

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2024年は訪日客数が過去最高を記録すると予想される中、中国からの観光客数の回復が遅れています。本記事では、中国インバウンド市場の回復が遅れている理由とインバウンド回復に向けた課題・対策について解説。加えて、中国向けインバウンドビジネスに必要なことを説明しています。

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訪日外国人数は急速に回復しており、2024年はコロナ禍前の2019年を上回る過去最高を記録する見通しです。

しかしながら、中国人観光客は他国に比べて回復が遅れています。訪日インバウンド市場において中国からの観光客はボリュームが大きく、重要な地位を占めるのは間違いありません。

本記事では、中国インバウンド市場の最新動向・旅行ニーズの変化や消費回復に向けた課題

について解説します。加えて、回復が進む見込みの中国インバウンド市場に向けた対策・中国向けインバウンドビジネスで必要なことを説明します。

中国インバウンド市場に向けてビジネス展開を考えている企業のご担当者は、ぜひ最後までご覧ください。

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1.中国インバウンド市場の最新動向

インバウンド全体として2023年はコロナ前の約8割程度まで回復し、訪日外国人数は25,066,100人となりました(※1)。JTBの2024年(1月~12月)の旅行動向見通し によると、2024年は過去最高を記録する見込みです。

本章では、中国インバウンド市場の動向について解説します。

※1)JNTO 訪日外客数(2023年12月および年間推計値)

1.1 コロナ禍からの回復が遅れている

2023年の中国からの訪日外客数は242万5千人で、2019年と比べて74.7%減少しています。2019年と比べて24.6%増加した韓国などと比べると回復がかなり遅れているのが実情です(※2)。

主な要因としては、コロナ禍から訪日旅行客が回復傾向にある他国に比べて、団体ツアーの解禁が遅れたことなどが考えられます。中国では新型コロナウイルスの水際対策で個人旅行は緩和されたものの、団体旅行の制限は続いていました。

日本行きの団体旅行やパッケージツアーの販売が再開されたのは、2023年8月10日。同年4月29日以降に入国制限が終了してから約3ヶ月間販売禁止措置が継続していたのも、回復が遅れている要因といえるでしょう。

国土交通省が発表している2023年冬期スケジュール 国際線定期便の概要によると、国際線定期便の運行本数はコロナ禍前の2019年冬季比で約9割まで回復。しかしながら、中国との国際定期便は同じく2019年冬季比で約5割にとどまっています。

※2)JNTO 訪日外客数数(2023年12月および年間推計値)

1.2 2024年は回復が進む見込み

コロナ禍前の2019年の訪日中国人観光客は個人旅行の割合が65.9%でした(※3)。2024年はさらに個人旅行のニーズが高まると予想されます。観光庁が発表している訪日外国人の消費動向によると、中国人観光客の来訪回数は初回の方が32.1%と最も多く、4〜9回の方がそれに次ぐ24.6%。リピーターの多さがわかる結果です。

2024年は中国からの国際定期便も増加傾向にあり、再び日本を訪れるリピーターも増えると想定されるため、観光客数も順調に回復すると見込まれています。

※3)観光庁 訪日外国人消費動向調査

2.訪日中国人観光客の旅行ニーズの変化

コロナ禍を経て、訪日中国人観光客旅行のニーズも変化しつつあります。本章では、訪日中国人観光客の旅行ニーズの変化について、3つの視点から解説します。

2.1 日本を訪れる目的の変化

以前は中国からの訪日観光客は、買い物を目的とした旅行がメインでした。しかしながら、Yorenの「2024年最新 訪日中国人インバウンドレポート」によると、約70%の中国人観光客は買い物以外の文化体験・観光を目的に訪日しています(※4)。

また、旅行に訪れる際の同行者は夫婦・パートナーや家族が多い他のアジア諸国と比べて、中国人観光客は一人旅の割合が35.2%と高いのが特徴です。

※4)Yoren 2024年最新 訪日中国人インバウンドレポート

2.2 消費動向の変化

かつて、大量の商品購入を目的に訪日する中国人観光客を指す「爆買い」という言葉が流行しました。中国人の買い物代は依然として他国に比べて高いものの、美味しい食事や文化を楽しむ方も増えています。現在は爆買いではなく、自分が欲しいものを購入する傾向が強まっています。

2023年10-12月の娯楽サービス費の購入率を2019年同期間と比較すると、32.9%から47.1%へと上昇(※5,6)。モノ消費からコト消費への変化がみられつつあるのも変化の一つです。娯楽費を細分化して購入率が上昇している科目を挙げると、次のとおりです。

●現地ツアー及び観光ガイド

●テーマパーク

●舞台・音楽鑑賞

●美術館・博物館・動植物園・水族館

●温泉・温浴施設・エステ・リラクゼーション

買い物だけが目的ではなく、体験を重視した旅行にシフトチェンジしているといえます。

※5)観光庁 訪日外国人消費動向調査(2023年10-12月) 

※6)観光庁 訪日外国人消費動向調査(2019年)

2.3 クチコミ重視

中国では家族や仲間の繋がりが深く、企業のプロモーションよりも、身近で実際に利用した方や購入経験がある方のクチコミを重要視するといわれています。

最近では、SNSやインフルエンサーによるクチコミを重視する方も増えてきました。それゆえ、多くの中国企業がインフルエンサーマーケティングを積極的に活用しています。

3.訪日中国人観光客の消費回復に向けた課題

上述のとおり、2024年は訪日中国人観光客数が回復する見込みです。それにともない消費回復を図るには、以下で挙げる課題の解決が不可欠です。

3.1 中国ビジネスパートナー選び

中国人向けに商売をおこなう際は、ビジネスパートナー選びが大切です。中国は日本とは政治体制やコンプライアンス・ビジネスマナーも異なります。中国・日本双方の最新事情やシステムに精通している相手を選ぶなど、ビジネスパートナー選びは慎重におこないましょう。

3.2 オーバーツーリズムの解消

訪日中国人観光客の需要が回復した際に、特定のスポットに人気が集中する懸念があります。

特に、訪日外国人に人気のある京都は、コロナ禍前からオーバーツーリズムに悩まされてきました。訪日外国人の増加にともない、地元住民がバスに乗り切れない問題が発生。地下鉄の利用を促進を図るため、バス1日券を廃止して地下鉄・バス1日券への切り替えを進めています。

各自治体・地域の魅力を発信して、人気スポットのみならず日本各地に観光客を分散させる対策が求められます。

3.3 中国に特化したマーケティング

中国は日本と異なり、インターネット検閲システムが存在しています。中国全土を網羅しており、グレート・ファイアウォールとも呼ばれます。

グレート・ファイアーウォールは、中国のインターネット検閲・ブロックシステム「金盾(きんじゅん)」のファイアウォール機能を指します。香港とマカオは特別行政区のためグレート・ファイアーウォールは設定されておりません。

言論統制が敷かれており、民主化などの規制されたキーワードは検索もできません。グレート・ファイアーウォールを回避するには、 VPNを利用するなどいくつかの手順をクリアする必要があります。

4.今おこなうべき中国向けインバウンド対策

回復傾向にある中国向けのインバウンドへの対策が急務です。しかしながら、コロナ禍を経て旅行や消費動向に変化が見られるため、消費回復を図るには新たな対応が求められます。

ほかにも他国とは異なる中国独自の文化への対応などについて解説するので、インバウンド対策の参考にしてください。

4.1 中国独自のSNSの活用

上述のとおり、中国では大規模な検閲システムのグレート・ファイアーフォールが敷設されています。それゆえ、日本を含めて他国で使用されているXやInstagramなどのSNSは中国では利用できないものがほとんどです。したがって、中国独自のSNSへの対応が重要です。

中国独自で利用されている代表的なSNSは、以下のとおりです。

SNS名称

概要

WeChat

中国の代表的なソーシャルメッセージングアプリ

Weibo

X(Twitter)のような短文でのやり取りができるサービス

Baidu Tieba

検索エンジンBaiduがホストのオンラインコミュニティ

RED

中国版Instagramと呼ばれているメッセージングアプリ

WeChatはメッセージ交換はもちろんのこと、オンライン通話やショッピング・支払いやタクシーやチケットなどの予約に利用できます。

そのほか、中国版のX(Twitter)と呼ばれているWeibo、Instagramと呼ばれているREDなど中国独自のSNSが利用されています。中国のインバウンド向けの対策には、SNSへの対策が必須です。

4.2 動画を活用したマーケティング

中国では、代表的な動画配信プラットフォームであるYouTubeも利用できません。動画プロモーションをおこなうには、中国独自の動画配信サービスを利用する必要があります。中国で現在よく使われているのは、Douyinとbilibiliです。

TikTokの運営元ByteDanceが提供している中国版のTikTok「Douyin」は、中国最大のショート動画プラットフォームです。動画SNS「bilibili」は若い世代に人気があります。

これらは中国でプロモーションをおこなう際に、重要なプラットフォームといえるでしょう。

4.3 Webの地図情報を充実(大衆点評)

「大衆点評」は、中国で最も規模の大きなクチコミサイトです。1000を超える世界の各都市の情報が掲載されています。日本を訪れる中国人の約半数が旅行前に大衆点評のクチコミを参考にしています。

大衆点評は旅の前・旅の途中・旅の後と、全てで役立つクチコミサイトです。中国人観光客に向けたPRとして、大衆点評への情報掲載は必要不可欠です。

4.4 KOLやKOCの有効活用

中国では、ライブ配信を活用した「ライブコマース」が活発です。インフルエンサーがライブ配信で商品をおすすめして、視聴者がその商品を購入する流れです。このようなインフルエンサーを「KOL」「KOC」と呼びます。

KOLとは、「Key Opinion Leader」の略です。KOLは特定の分野に精通した複数のSNSを横断して活動するインフルエンサーを指します。ライブコマースが活発な中国において消費者に対する影響力が大きいため、中国の各SNSでのマーケティング・プロモーションでは欠かせない存在です。

KOCとは、「Key Opinion Consumer」の略です。KOLとは異なり、どちらかというと消費者側の立場で商品レビューをおこないます。商品の比較や購入検討をする際に、KOCのレビューを参考にする方が多いのが中国市場の特徴です。

在日KOL・KOCの情報発信やレビューを参考に日本に訪れる方も多いため、中国インバウンドの回復を図るには必要不可欠です。KOLやKOCを招聘して中国国内での旅行体験の情報発信を依頼し、インバウンド集客増加を図るケースも見受けられます。

4.5 越境ECやライブコマースの活用

中国のEC市場は世界一の規模を誇ります。商品の販売手法としては、上述のとおりKOLやKOCといったインフルエンサーを活用したライブコマースが盛んです。中国国内EC市場・越境EC市場ともに伸長率が高いため、インバウンド集客には欠かせません。

越境EC(Cross Border E-Commerce)とは、国境を超えて電子商取引(EC)をおこなうことです。海外拠点のECサイトで商品を購入し日本に送付する、あるいは日本拠点のECサイトで海外向けに商品を送付する取引を指します。

訪日中国人はECサイトでの商品購入に抵抗がありません。訪日した際に実店舗を訪れて商品を確認したのち、ECサイトに誘導して帰国後の商品購入を促すことも可能です。

5.中国向けインバウンドビジネスで必要なこと

中国向けインバウンドビジネスを展開する際は、日本とは異なる文化や商慣習への理解が必須です。本章では、中国向けインバウンドビジネスで必要なことについて解説します。

5.1 市場に対する適応力

中国人観光客の集客・消費を増やすには、中国市場の特性を把握したうえで適応しなければなりません。上述したインターネット検閲システムをきちんと理解して、検索できないキーワードを含まずに掲載可能な形での情報発信が求められます。そのほか、中国独自のSNSへの適応に加えて、中国人観光客のニーズの変化にも対応しましょう。

また、多言語対応も急務ですが、言葉の壁や文化の壁を超えて誰にとってもわかりやすいユニバーサルデザインを意識することも大切です。

5.2 中国の歴史や文化への理解

中国は日本とは異なる歴史や文化があります。政治情勢や経済の展望などなどはめまぐるしく変化するので、状況を見定めなければなりません。日中関係が悪化しているタイミングでのSNSの投稿が批判を浴びたケースなどもあるため、注意しましょう。

中国で訪日旅行のプロモーションの展開を検討する際は、中国の歴史や文化を正しく理解し適切なタイミングでのプロモーションが求められます。

5.3 消費行動が高まるタイミングを抑える

中国において海外旅行の消費行動が高まる期間は、7〜8月、9〜10月の国慶節、1〜2月の春節です。観光の需要が高まる時期やネット通販各社が大規模なセールをおこなう11月11日の独身の日など、消費行動の高まるタイミングをおさえる必要があります。

5.4 中国統計データの把握

中国インバウンド向けにビジネスを展開するのであれば、中国の最新動向を正しく把握しなければなりません。例えば、日本貿易振興機構(JETRO)のWebサイトには、中国の概況・基本統計が掲載されているので、参考にしましょう。

5.5 キャッシュレス決済への対応

中国は政府主導でキャッシュレス化を推進しており、キャッシュレス決済利用率が83.8%にのぼる世界でも有数のキャッシュレス先進国です(※7)。代表的なキャッシュレス決済サービスは以下の3つです。

●微信支付(WeChatPay)

●支付宝(Alipay)

●銀聯(UnionPay)

中国向けインバウンドビジネスで成功を収めるには、これらのキャッシュレス決済への対応が不可欠です。

※7)一般社団法人キャッシュレス推進協議会 キャッシュレス・ロードマップ 2023

6.まとめ

中国インバウンド市場は他国に比べて回復が遅れています。他国に比べて団体旅行の解禁が遅れたことなどが要因とされています。しかしながら、2024年は個人旅行を中心にインバウンド回復が進む見込みです。

本記事では、中国インバウンド市場の最新動向や訪日中国人観光客の旅行ニーズの変化について解説しました。加えて、中国インバウンド市場に向けた対策・今後おこなうべき施策について言及しました。

中国には独自のインターネット網やSNSがあります。中国インバウンドに向けてビジネス展開を図るには、中国市場を統計データなどから理解したうえで適切なプロモーションを実施しましょう。

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