寺院旅行ブーム

近年、中国の寺院旅行は急速に成長しており、特に若者たちの間で人気を博している。携程（Ctrip）のデータによると、2023年以来、寺院関連の観光地のチケット予約数は前年比310％増加している。予約者のうち、90年代から2000年代生まれが約50％を占めている。多くの若者が週末や休暇を利用して寺院を訪れ、都会生活とは全く異なる静寂な雰囲気を味わっている。

筆者は95後（1995年～2000年に生まれた世代）の一員として、以前は両親と一緒に出かける際にしか寺院を訪れることはなかった。しかし、現在では単独でも寺院に足を運び、都市の喧騒から離れた静けさに浸るようになった。この様な若者たちの傾向は、普陀山や霊隠寺などのいわゆる有名寺院だけでなく、多くの小規模な寺院にも恩恵をもたらしている。若者たちは寺院を、スピーディな生活から逃れ、心の平静を求める理想の場所と見なしている。

現在、一部の寺院では、若者たちの精神文化へのニーズに応えるために、禅修コースや短期体験プログラムを開設しているところもある。

寺院に関する経済の繁栄

寺院観光の盛況に伴い、寺院周辺の関連経済も大幅に増加している。iMedia Researchの調査によると、58.2％の回答者が、寺院は文化、観光、交流、消費が一体となった短距離のレジャー旅行に最適な場所であると考えている。また、44.3％の回答者が、寺院内のカフェやお守りなどの商品が多くの若者を惹きつけていると述べている。これらの経済活動は、地域に新たな収入源をもたらすだけでなく、関連する文化産業の発展も促進している。多くの商店が、伝統工芸と現代デザインを融合させた仏珠アクセサリーや禅の精神を感じさせる生活用品など、革新的な文化商品を展開している。さらに、寺院周辺の精進料理レストランや茶館も若者たちの社交やリラックスの新たな選択肢となっており、健康的な食事を提供するとともに、静かで調和の取れた雰囲気を演出している。筆者も近くの寺院に足を運び、美味しい精進麺を楽しむのが好きだ。

「お寺熱」現象の背後にある若者たちの心態

また、若者たちは「お香を焚く」ことへの興味も増している。現代のスピード感と高いストレスの生活の中で、多くの若者たちが疲れを感じているようだ。iMedia Researchの調査によれば、56.5％の回答者が「お香を焚く」ことを心のストレス解消法と考えており、癒しを求めている。寺院が提供する静寂な環境と精神的な癒しがこのニーズにぴったり応えているのだ。

社会のペースがますます加速する中、さらにここ数年の新型コロナ禍の影響もあり、現代の若者たちは物質的な追求と精神的な欲求のバランスを求め、「お香を焚く」ことで心の安らぎを見つけようとしている。寺院は彼らの自己反省や心の調整の場となり、多くの若者が寺院の禅修活動に参加して、ストレスを軽減するだけでなく、内なる自分を探求し、より深い生活の意味を追い求めている。

まとめ

寺院観光への注目は単なる観光現象にとどまらず、若者たちが精神的な生活や伝統文化に対して興味と重要性を感じていることを示している。この現象の発展とともに、社会は精神的な健康や文化の継承に対する関心を高め、関連する産業やサービスの拡充も促進されるだろう。これは、生活スタイルを豊かにするだけでなく、社会の多様な発展にも新たな可能性を見出している。