中国向け越境ECで成功するには?一般貿易との違いや参入メリットを解説

中国向け越境ECで成功するには?一般貿易との違いや参入メリットを解説

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本記事では、中国向け越境ECについて解説します。越境ECのメリットや一般貿易との違いに加えて、中国におけるEC市場の特徴・越境EC市場に参入する方法・注意点や成功するためのポイントを詳述。また、中国越境 EC市場での成功事例および失敗事例と対策についてもご紹介します。

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近年、中国では越境EC市場が急拡大しており、世界最大のマーケットを構築するまでに成長しています。日本においても大きなビジネスチャンスと捉え、参入を考えている企業は多いのではないでしょうか。

しかしながら、中国は他国に比べて独自の市場形成を経て成長してきた背景があり、規制や法律・物流形態などにおいて中国ならではの特徴をよく理解しておく必要があります。

本記事では、越境ECと一般貿易の違いや、中国越境EC市場の特徴・市場へ参入する方法と注意点に加えて、中国越境ECで成功するためのポイントについて解説します。

記事の後半では、中国越境 EC市場での成功事例および失敗事例と対策についてご紹介していますので、中国でのビジネス展開を検討している企業のご担当者は参考にしてください。

1.中国の越境EC市場の特徴

中国の経済・ビジネスシーンにおいて越境EC市場は現在どのような位置にあるのでしょうか。まずは、中国越境EC市場の概況とマーケットの特徴について解説します。

1.1 巨大な市場規模

中国の2022年のEC市場規模は約2兆 8,790 億ドルで、BtoCのEC市場シェアは全世界の50.4%を占めています。これは、2位米国の18.4%を大きく引き離す数字です(※1)。

世界の総人口の5分の1を占める人口の多さに加えて、共働きの夫婦が多く「商品をECサイトで購入し勤務先で受け取る」というライフスタイルも一因になっています(※2)。

また、インターネットの普及やECサイトと物流の利便性が上がったことで、越境EC市場も急激に拡大しています。日本・米国・中国の3国間の越境市場規模推計によると、中国の越境EC総市場規模は5兆68億円。これは米国(2兆2,111億円)の2倍以上、日本(3,954億円)の12倍以上の数字です。

(※1)経済産業省 令和4年度 電子商取引に関する市場調査 報告書

(※2)UNFPA Tokyo 世界人口白書2024 世界銀行 中華人民共和国

1.2 市場を牽引する大企業

中国のEC市場においては、「アリババグループ」「京東グループ」「ピンドゥドゥ」の三大ECが市場を牽引しています。

アリババグループは、「天猫国際(Tmall Global)」「考拉海購(Kaola)」の2大越境ECプラットフォームを展開。中国のEC市場の半数近くのシェアを誇ります。

京東グループの「京東全球購(JD Worldwide)」は、「天猫国際」に追随する形でスタートした越境ECサイトです。スピーディな配達や正規品保証といった特徴から人気を集め、市場で第2位のシェアを誇っています。

「拼多多(Pinduoduo:ピンドゥドゥ)」は、中国のベンチャー企業である上海尋夢信息技術有限公司が運営するECプラットフォームです。共同購入型というユニークなビジネスモデルが注目を集め、2021年にはユーザー数が8億人を突破。越境ECアプリ「Temu(テム)」を海外に向けて展開するなど、目覚ましい成長を遂げています(※3)。

(※3)业绩快报丨拼多多Q1营收同比增长239%,归属普通股东净亏损达18.9亿元

1.3 新時代のマーケティング戦略

中国EC市場の大きな特徴といえるのが「OMO戦略」です。OMO(Online Merges with Offline)とは、オンライン・オフライン問わずシームレスな購買体験の提供を図る販売戦略を指します。例えば、オフラインの実店舗にQRコードを設置し、決済はECプラットフォーム上でおこなえるといった仕組みです。

アリババグループではOMOを「ニューリテール」と呼び、「小売のDX化を実現し、オンラインとオフラインを融合させた新しい消費体験を提供すること」と定義しています。同グループが展開するニューリテールスーパー「盒馬鮮生(フーマーシェンシェン)」は、中国全土へ急速に店舗を拡大させています。

2.越境ECと一般貿易の違い

越境ECとは、インターネットを通じて商品を直接海外の消費者に販売する方法です。一般貿易は商品を海外にある企業に卸して、そこからその国内で販売する方法を指します。

両者の違いとして挙げられるのは、主に「取引相手」「関税のかかり方」「物流手段」「決済方法」「商流」などです。

越境EC

一般貿易

取引相手

BtoC、BtoB、CtoC

BtoB

関税

一定額以下の商品は輸入関税と消費税が免除される場合がある

輸入関税・消費税・付加価値税が課される

物流手段

国際郵便や国際宅急便など

航空輸送や海上輸送など

決済方法

クレジットカード・第三者支払サービス(PayPalなど)など多様

荷為替手形決済もしくは外国為替送金

商流

関わる業者や官公庁の数が少なくスピーディ

関わる業者が多く手続きが煩雑

越境EC・一般貿易いずれも関税のかかり方は国によって違い、それぞれ輸入する国の規定に従う必要があります。中国に関する関税や法規制などの詳細については、後述します。

比較的低コストで手軽かつスピーディに進められるのが、越境ECのメリットといえるでしょう。近年は、通信や決済・物流といったインフラが整備され、商品登録や発送業務もECプラットフォームが担ってくれるためハードルが下がっています。

3.中国の越境EC市場に参入する方法

中国の越境EC市場に参入するには、主に3つの方法があります。それぞれの具体的なやり方とメリット・デメリットをみていきましょう。

3.1 中国のECモールに出店 

1つ目は、淘宝網(taobao)や天猫(Tmall)、京東全球購(JD Worldwide)など中国の代表的な越境ECプラットフォームに出店する方法です。

天猫や京東全球購は中国に法人を持たずに出店できます。ただし、出店の審査基準が厳しいため、会社の規模や経営状況によっては認可が難しいケースも少なくありません。

条件をクリアできない場合は、淘宝網にCtoCとして出品する方法もあります。淘宝網の登録には中国で銀行口座を開設する必要があり、中国の住所証明と労働証明を取得しなければなりません。外国人による出店はこちらもハードルが高いため、出店代行業者を利用し一任する方法もあります。

自社対応の場合、適用される中国の法令も理解しておかなければなりません。手数料はかかりますが、中国の法令や商習慣に精通した出店・販売代行業者を利用すれば、手続きが格段にスムーズになります。

3.2 日本国内の越境ECサイトで中国内に向けて販売

2つ目は、Amazonや楽天などの日本国内にある越境ECに対応したプラットフォームで中国の消費者に向けて販売する方法です。

日本国内のプラットフォームであれば問い合わせやサポート体制も充実しているので、最も手軽な方法といえるでしょう。ただし、配送コストや手数料が国内での出店と比べて高額になる傾向にあります。加えて、言語対応・通貨対応・関税などへの対応も不可欠です。

3.3 中国で自社ECサイトを構築する

中国に拠点を築き、自社のECサイトを構築する方法もあります。自社ECサイトなので出店料や手数料がかかりません。また、自社のブランディングを図れる点もメリットです。

一方で、販売導線・販売戦略などを考える必要があり、コストや時間がかかるなど難易度は高めです。後述する中国電子商取引法の施行やECモールへの出店基準が厳しくなるなど、今後中国越境ECの選択肢が減る場合には需要が増す可能性があります。

4.中国の越境EC市場に参入する際の注意点

中国の越境EC市場に参入する際は、中国独自のルールや商習慣をよく理解・把握しておかなければなりません。特に注意するべき3つのポイントについて解説します。

4.1 中国国内の法令・規制をよく確認する

中国越境EC市場へ参入する際に注意すべき法令として、中国電子商取引法が挙げられます。中国電子商取引法とは、中国における電子商取引分野に対して、事業者がどのような法的責任を消費者に対して負うかを明確にした法律です。秩序の維持や持続的な発展を目的として2019年に施行されました。

具体的には、以下のような内容です(※4)。

●営業許可証情報・その他経営業務に関連する行政許可情報をホームページの目立つ位置に公示しなければならない

●税務登記を申請し、事実に即して納税申告をおこなわなければならない

●消費者から保証金を取る場合、保証金返還の方式・手続きを明示しなければならない

対象となるのは中国国内の電子商取引と定められています。中国の越境ECモールに出店すると「中国の法人」として登録されるため、電商法の適用対象になる点に注意が必要です。

(※4)ジェトロ(日本貿易振興機構) 中華人民共和国電子商取引法

4.2 配送モデルによって関税や税金が異なる

中国向け越境ECおよび一般貿易における関税のかかり方は、「直送モデル」と「保税区モデル」に分けられます。それぞれにメリット・デメリットがあるため、自社で取り扱う商品特性や取引規模を踏まえたうえで、どちらの方法を選択するか判断しましょう。

直送モデル

保税区モデル

税金の種類

行郵税(簡易課税方式)

電商総合税

税率

・品目によって13%、20%、50%の課税
・税額50元以下の場合は免税

・増値税と消費税をそれぞれ法定額の70%課税
・関税率は0%

メリット

・在庫リスクが低い

・倉庫保管の手間やコストがかからない

・税制の優遇措置がある
・受注〜配送がスピーディ
・配送料を抑えられる

デメリット

・受注〜配送に時間がかかる
・商品返品時の対応が煩雑

・倉庫保管のコストがかかる
・在庫リスクがある

直送モデルとは、EMS等の国際郵便を利用して直接中国の消費者に配送する方法です。

直送モデルの税率は、宝石や高級商品、タバコやお酒といった嗜好品は50%、その他の商品は20%もしくは13%と3段階に分かれています(※5)。

保税区モデルとは、中国国内の保税区に商品を輸送・保管し、注⽂の受注時に通関⼿続きをして出荷する⽅法です。税制の優遇措置が受けられるため、直送モデルよりも利用が進んでいます。

(※5)大和総研 中国越境EC・税制改正による保税区モデル・直送モデルへの影響

4.3 中国向けの決済サービスに対応する必要がある

中国はモバイル決済(デジタルペイメント)の普及が世界で最も進んでいます。主流となっているのは、「支付宝(Alipay)」や「微信支付(WeChatPay)」などのアプリ決済や「銀聯(UnionPay)」によるカード決済です。

それゆえ、これらの決済サービスが使えない商品やサービスは購入につながらない恐れがあります。また、クレジットカードやデビットカードによる決済の利用者は減少傾向にある点にも留意しなければなりません。

5.中国の越境EC市場で成功するためのポイント

中国の越境EC市場で成功するには、中国国内の市場特性をよく捉えたうえでビジネス展開していくことが重要です。ここでは、成功への近道となる3つのポイントについて解説します。

5.1 中国消費者のニーズに合った商品・サービスの提供

中国越境ECビジネスで成功するには、現地のニーズに合った商品やサービスを提供しなければなりません。そのためには、中国特有の文化や生活様式を理解し、中国の消費者が何に価値を感じているのかを事前にしっかりリサーチしておく必要があります。

商品・サービスに合わせた適切な販売プラットフォームの選択や、情報発信をおこなう媒体の選定も重要です。中国ではGoogleなどの検索エンジンを使用できないため、「微博(Weibo)」等の中国国内のSNSの有効活用が求められます。

5.2 ライブコマースとKOLの活用

中国では近年、「ライブコマース」というプロモーション手法が人気を集めています。ライブコマースとは「ライブ配信」と「Eコマース(電子商取引)」を組み合わせた言葉で、ライブ配信で商品を紹介しながらユーザーに販売する手法です。

また、中国ではKOL(Key Opinion Leader)と呼ばれる中国版インフルエンサーが支持を集めています。KOLはインフルエンサーのなかでもより専門性を有し、強い影響力を持っている点が特徴です。

中国では口コミを重視する傾向が強く、ライブコマースにおけるインフルエンサーやKOLの口コミが多大な影響を持っています。商材とマッチしたKOLを上手く活用できると、多大な効果が期待できるでしょう。

5.3 中国進出支援のプロからサポートを受ける 

中国でWebサイトを立ち上げて商品を販売する場合、ICP(Internet Contents Provider)登録をおこなう必要があります。

ICP登録とは、Webサイトの管理者情報を明確にするために、中国国内のサーバから発信するすべてのWebサイトに義務付けられている登録手続きです。違法な情報発信の防止を目的としており、登録番号の記載がないサイトを公開した場合は、配信停止命令や厳罰が下されることがあります。

問題は、外資だとこのICPライセンスが取りにくいという点です。また、上述のように大手ECプラットフォームでは審査基準が厳しいなど高いハードルがあります。法規制なども変化が激しく、常に最新の情報を確認しておかなければなりません。

自社の人的リソースを注いでこれらすべてをおこなうのは困難なので、中国の越境ECに詳しい専門家やサポート企業に依頼するのが得策です。

6.中国越境EC市場で成功した企業の事例

すでに中国越境EC市場で成功をおさめている日本の企業事例は数多くあります。本章では、成功した企業の事例3例から成果をあげる秘訣を紐解いていきましょう。

6.1 資生堂[1] 

資生堂では天猫国際を活用し、自社ブランドの化粧品やスキンケア商品を中国消費者向けに販売しています。また、ブランド運営をより中国に根ざしたものにするため、上海に拠点を設立して独自の商品開発・マーケティング戦略を展開。中国の消費者ニーズのキャッチに成功しています。

さらに、中国で毎年11月11日に実施されるネット通販セール「独身の日」には、自社のビューティーコンサルタントが商品を紹介するライブコマースを実施。2020年におこなわれた配信では多くの視聴者を集めて好評を博しました。

6.2 ユニクロ

ユニクロを展開するアパレル大手のファーストリテイリングは、天猫国際や京東の海囤全球に出店し、中国市場でのEC販売を強化しています。中国国内の需要を掴み、人気商品やサイズ展開の充実を図って消費者を獲得している点が特徴です。

また、台湾・香港を含む中国事業グレーターチャイナに代表される、ECと実店舗のマーケティングを融合したOMO戦略が、ブランドの価値向上に大きく寄与しています。

ブランディングや的確なターゲティングだけでなく、セール時期にあわせた割引キャンペーンの実施やSNSの有効活用などの取り組みも成功要因といえるでしょう。

6.3 キリン堂

関西を中心とするドラッグストアチェーンのキリン堂は、天猫国際や豌豆公主(ワンドウ)に出店し、中国向け越境EC事業を展開。中国の商習慣に合わせて体制を構築した点や、いち早く越境ECに目を付け市場参入した点が功を奏し、多くの消費者獲得に成功しています。

また、中国国内の倉庫に商品を入れる保税区モデルを採用し、EMS配送料などの経費を抑え利益確保にもつなげています。

豌豆公主は、商品情報を日本語で登録して商品を送付するだけで、アプリの運営元企業のインアゴーラが決済や配送・翻訳・顧客対応などを代行してくれるサービスです。こうしたプラットフォームを選定し、有効活用している点も成功の一因といえるでしょう。

7.中国越境EC市場のマーケティング失敗事例

中国越境EC市場への進出に成功した企業ばかりではありません。中国越境EC市場への参入時にありがちな失敗事例を、「準備不足・リサーチ不足」「文化・習慣の違いに対応できていない」の2パターンに分けてみていきましょう。

7.1 準備不足・リサーチ不足で失敗した事例

上述したように、市場参入する前のマーケティング調査やニーズの把握は欠かせません。準備不足で失敗した企業の事例を3つご紹介します。

●とりあえず中国進出したものの、自社でメインに扱っている商品は中国での販売が禁止されていた

●出店を予定していた大手ECプラットフォームで販売許可が下りず、販路の変更などで手間やコストが増大した

●自社商品の商標登録を中国国内の第三者企業に取られてしまい、中国の市場で商品を販売出来なくなってしまった

販売展開や宣伝方法に注力するのも大事ですが、販売や宣伝のための各種申請や事前調査も抜かりなくしっかりおこなわなければなりません。

7.2 文化・習慣の違いに対応できておらず失敗した事例 

日本でヒットした商品やマーケティング手法が、中国でも同じように通用するとは限りません。文化や習慣の違いで失敗してしまった企業の事例を3つご紹介します。

●日本で流行しているファッションを中国でそのまま販売したが、現地では別ジャンルのファッションが流行していて、受け入れられる余地がなかった

●日本でLINEを活用した集客に成功したため同様の手法を考えていたが、WeChatやWeiboなどのチャットツールが主流の中国市場に対応できなかった

●中国の法規制や商習慣を把握していなかったためトラブルになった

「日本で成功したから」と安易に事業展開すると、上記のような失敗を招いてしまいます。事前リサーチで現地の商習慣を把握し、現地ニーズに合った商品選定をおこなったうえで販売戦略を考えなければなりません。不安を感じる場合は、中国国内のマーケティング・法規制を熟知している人材を確保し、サポートを受けつつビジネス展開しましょう。

8.まとめ

中国の越境EC市場は拡大を続けており、日本の企業にとっても大きな商機と捉えて参入を考えている企業も多いでしょう。しかしながら、目先の情報だけにとらわれてしまい失敗した事例も少なくありません。中国国内の消費者ニーズや注意すべき法令や規制などのルールを事前にしっかり調査したうえで、ビジネス展開を考える必要があります。

本記事では、越境ECと一般貿易の違いや中国越境EC市場の特徴・市場へ参入する方法と注意点に加えて、中国越境ECで成功するためのポイントについて解説。記事の後半では、中国越境EC市場での成功事例と失敗事例をご紹介しました。

中国の越境EC市場へ進出を考えている企業のご担当者は、その足がかりとしてぜひ参考にしてください。


参考資料:

https://corp.shiseido.com/jp/company/talk/20220217.html

https://seo-blog.betterweb.co.jp/cross-border-e-commerce/199/

https://ecnomikata.com/ecnews/42165/

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