中国EC業界┃中国ECの安価商品が海外から注文殺到、物流業界も価格競争に巻き込まれた

中国EC業界┃中国ECの安価商品が海外から注文殺到、物流業界も価格競争に巻き込まれた

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最近、「ブラックフライデー」の大規模なプロモーションにより、多くの注文が殺到しており、運送業もその影響を受けています。しかし、物流企業は大量注文の発送には運送の履行不能や、在庫回転率の不足などの困難に直面しています。問題の背後には、物流業の地位の低下、物流リソースの分散などさまざまな課題が潜んでいます。catalyst-crossing編集部は中国の物流業界の課題について、中国現地メディアの記事を日本語でお伝えします。

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最近、「ブラックフライデー」の大規模なプロモーションにより、多くの注文が殺到しており、運送業もその影響を受けています。11月27日、複数の物流業者やEC事業者は、「年末年始に家電製品、衣料品などの製品の需要が急増し、越境EC業界が価格競争を展開する中、物流業界も価格競争に巻き込まれた」と北京商報に語った。運送の履行不能や、在庫回転率の不足などの問題の背後には、物流業の地位の低下、物流リソースの分散、および収益化サイクルの長さなど、さまざまな課題が潜んでいます。安定した越境サプライチェーンを構築するには、依然として遠く険しく、長い道のりがあります。

急増した運送注文

毎年の「双11(ダブルイレブン)」と同様に、「ブラックフライデー」も中国国内外の貿易業者にとって厳しい戦いとなり、物流リソースもますます不足しています。クロスボーダー輸送サービスプロバイダーの情報によれば、現在、Amazonの「ブラックフライデー」のプロモーションなどの影響によるEC注文からの貨物量の急増や、航空輸送能力の減少の影響で、運送価格は引き続き値上げの見込みとなっています。

越境物流企業の「递四方」(ディーシーファン)の副総裁である戴彬氏は、年末には家電製品や衣料品などの消費需要が通常著しく増加する傾向があると述べています。例を挙げると、ロボット掃除機などの家電製品への需要は平均で40.68%増加し、衣料品の需要は月平均で50.96%増加するとのことです。

アメリカのEC研究機関Adobeのデータによると、「ブラックフライデー」当日、アメリカのユーザーはオンラインで98億ドルを支出し、前年比7.5%増加したことがわかりました。最も売れたカテゴリはテレビ、スマートウォッチ、音響機器などの電子製品、おもちゃやゲームなどでした。

ECの注文数がピーク期を迎えており、運送業へのプレッシャーも急激に高まります。たとえば、返品や交換率が高く、アフターサービス要求も高い家電製品や、SKU(Stock keeping Unit, 在庫管理における「最小の品目数を数えるための単位」)が多く、多くの拠点から集荷する必要のある衣料品も物流運送に重圧をかけています。さらに、EC事業者の売上予測が実際の売上と大きく乖離していれば、海外の倉庫に商品が滞留し、多大な物流コストを引き起こします。

シッパーが懸念している料金・日数の不確実性について、百世国際のクロスボーダー輸送事業部の総経理である吴林浩氏は、主にサプライチェーンの関連企業数が多く、実際運送におけるタイムラグがあり、サイクルが長いことが、最終的に売り手側のサプライチェーンに波及していると考えています。通常、国内のECによる貨物運送は2〜3日で履行されていますが、クロスボーダー輸送の場合では15〜30日が必要となっています。最初に発送された商品が逆に遅れて到着し、倉庫の状況が不規則であると、国内の倉庫にプレッシャーをかける可能性もあります。

今年の10月から11月にかけて、百世は浙江省の义乌と広州にそれぞれ2つの荷集め倉庫を新設し、稼働させました。吴林浩氏は、「百世国際はすでにピークシーズンに海上輸送の運航スケジュールと船舶のスペースを事前に確保し、輸送力を注文数ピーク時の流量に対応できるようにしている」と指摘しています。

物流トップ企業も「低価格戦略」を選択

 最近、オンラインショッピングにおいて、コスパを求める傾向が海外市場にも波及しています。越境EC業界で6年間従事してきた丁波(仮名)も「今年が一番厳しい年だ」と語りました。

丁波によれば、今年は中国国内の工場責任者らと「ブラックフライデー」の生産計画を協議する日々でした。「コスパを強調し、売るのはブランドではなく商品であり、要るのはアクセスではなく売上だ」というスローガンを打ち出しています。従来のように、丁波は「通常1つのヒット商品を選択し、それを販売すれば、「ブラックフライデー」で売上の達成ができますが、今年はその技がもはや効かなくなってしまった」。プラットフォームチャネルのコストや顧客獲得コストの費用アップにより、越境ECの収益率が明らかに減少しています。

かつて丁波がAmazonなどのECプラットフォームで販売していた美顔器やネックマッサジャーなど価格が500ドル以上の商品が全部大人気でしたが、今ではこれらの製品を買う人はほとんどいません。逆にウィッグ、つけまつげ、ネイルアートなどの低価格商品の注文数がずっと安定しています。「私たちが主に扱っているのは、粗利益が25%〜60%の日用雑貨ですが、物流と人件費を加えると、純利益は20%以下になります。」

低価格競争が進んでいる中で、企業はコスト管理にもっと注意を払っています。日用雑貨を販売している越境EC企業の営業担当者は北京商報に対し、「過去2年間、コロナ禍の深刻な影響を受け、物流コストが高騰していましたが、今年は欧米市場の消費がより合理的になり、各ECプラットフォームも低価格戦略を打ち出している中、物流コストを低減するために弊社商品は船便にて発送させて頂きます」と述べています。

浙商証券の分析レポートによれば、サンプル品の中で、同じ商品が「TEMU」の価格は「Shein」よりも30%以上低い価格で販売していることが明らかにしました。さらに、一部の日用雑貨の商品はAmazonの半額で販売されていることも時々あります。 「AI越境」エコシステムの共同創設者である钱大柱氏によれば、ほとんどの販売業者は「TEMU」で注文を得るために、低価格戦略を選択したとのことです。従来の越境ECビジネスモデルと比べて、プラットフォームは競売などの手段でトラフィックを調整し、「TEMU」や「抖音」での収益は明らかに少ないです。

そのため、ますます多くの販売業者が物流のコストダウンに取り組んでいる中、今年の「ブラックフライデー」前に、中国国内の主要な運送大手企業である順丰、菜鳥、京東物流などが送料キャンペーンや配達所要日数短縮などのイベントを開催し、外貿業者の注文を引き寄せようとしています。顺丰は最近、Amazonで「購入と配送」サービスを利用する出品者向けに遅延に対する補償サービスを導入し、出品者は中国からアメリカへの輸送で最大9割の運賃優遇を受けることができます。一方、「速卖通菜鸟優選倉」の在庫量は「ブラックフライデー」前に昨年比で約9倍に増加し、貨物は主に「グローバル5日配達」サービスの対象国に発送され、販売業者は「5ドルで10日届け」や「2ドルで20日届け」などの差別化されたプランを選択できます。

同時に、抖音、TEMU、速卖通などのプラットフォームは、販売者の物流に対する不安を解消するために、他社との共同配送や遅延補助金などの支援策を導入しています。販売者は商品を国内の指定された倉庫に送り、その後のクロスボーダー輸送はプラットフォームが担当しています。

サプライチェーン構築には投資と収益のバランスが大事

物流企業の間で展開されている価格戦は、限られた市場の中でより多くの注文を獲得するためであり、中国国内の物流業界が依然として多様なブランド競争しています。「運聯研究院」が発表した「2022-2023越境EC物流業界ホワイトペーパー」によると、年間収益が100億元を超えるクロスボーダー輸送企業は3社あり、20億元から100億元の収益を上げている企業が7社、10億元から20億元の収益を上げている企業が24社あります。

運聯研究院は、「越境EC産業におけるクロスボーダー輸送サービスプロバイダーは狭い市場で生き残るビジネス形態であり、意思決定はごく少数の上流および下流の企業に集中しています。その弱い地位は、業界全体で持続的な同質化競争として直接現れています。」と指摘しています。同時に、物流事業者は国内の物流拠点位置を設定する際には、集荷しやすい場所と出荷港の地理的位置を兼ね備えることが一般的であり、放射状物流ネットワークの形成や貨物輸送ルート最適化の考慮に基づいていないため、物流ネットワークの形成は困難だとされています。そのため、目的地の海外の国々でも、地元の物流システムに頼らなければならないです。

越境EC事業を引き受け、拡大するために、菜鳥、京東物流などの大手企業は近年、海外倉庫や転送ハブなどの建設に持続的に投資し、多くの国や地域で自己運営の物流ネットワークを構築し、物流の管理能力を向上させています。例えば、京東物流は北米で運営している複数の海外倉庫とレンタル倉庫を基盤としており、自己運営のトラック輸送サービスは米国の90%以上の地域に配達可能で、北米全域範囲での配達日数は最短2-3日となっています。


しかし、物流システム構築への投資には多額の資金だけでは足りなく、一定の注文数も必要です。海外倉庫の運営に関して、戴彬氏は北京商報に対して一例を挙げました「物流企業の主なプレッシャーは、倉庫の容量とコストコントロールから来ています。各海外倉庫拠点の営業状況、注文数、および機器、人員、貨物などの運営コストは、海外倉庫の収益率に関わっています。」戴彬氏は、「新設倉庫が設立してから3か月間で、倉庫容量利用率が70%程度に安定し、一般的な収益水準を維持できる場合でも、建設資金の回収には3年から5年かかる可能性があります。」と指摘しています。


現在、国内のサプライチェーン業界では、お客様のニーズに応じてカスタマイズサービスの提供できる倉庫・運送企業が多数存在していますが、海外サプライチェーンの構築は遅れていると言えます。業界内部の競争を加速させるために、トップ物流企業は主に自社ECビジネスとの「自然なバンドル」関係も自社物流の海外進出に後押ししており、菜鳥や京東物流のビジネスモデルがその代表例です。一方で、SHEIN、TEMUなどはサードパーティーの物流サービスプロバイダを活用し、自社のサービスネットワークを拡大しています。

同時に、国内の物流企業は運送プロセスにおいて、効率を向上させるために自動化への投資を行っています。戴彬氏も北京商報に対し、「サプライチェーンの効率向上のために、递四方は自動仕分けロボットの研究開発にさらなる資金を投入し、すでに導入した自動積み上げシステムは単一のロボットアームで変形したボックスの対応、複数のチャネル・積み上げ口への仕分けが実現できます。人手による積み上げより効率が4倍向上するだけでなく、貨物仕分けのエラー率も0.01%までに低減しました。


元記事: 电商低价“卷”到海外 跨境物流挑灯夜战

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