日本国内旅行も好調な推移を見せています。2024年1-3月期の日本人国内旅行消費額は約4.8兆円と、第1四半期としては過去最高を記録しました。国内旅行者一人当たりの旅行支出も2019年同期比で22.5％増加し、約4.3万円となっています。

訪日外国人旅行の現況については、最新の統計データをもとにお伝えします。2024年の訪日外国人旅行者数と消費額が大幅に回復し、過去最高を更新する見込みとなっております。

１．訪日外国人旅行者数

2024年6月の訪日外国人旅行者数は約314万人となり、単月として過去最高を記録いたしました。これは2019年同月比で109％の回復となり、昨年10月より9ヶ月連続で単月ではコロナ前の水準を上回っております。2024年上半期のペースが下半期も続けば、2024年の訪日外国人旅行者数は3,500万人も視野に入る状況だとわかりました。

この背景には、以下のような要因があります：

・円安傾向による訪日旅行の割安感

・入国制限の緩和

・アジアを中心とした訪日需要の高まり

２．訪日外国人旅行消費額

2024年4-6月期の訪日外国人消費額は約2.1兆円となり、四半期として過去最高を更新いたしました。2024年上半期のペースが下半期も続けば、2024年の訪日外国人旅行消費額は8兆円も視野に入る状況です。

1）訪日外国人観光客の消費額の推移

2023年年間の訪日外国人旅行消費額は5兆2,923億円（2019年比+9.9％）となり、過去最高を更新しました。1人当たりの旅行支出は23万9千円となっています。このペースが続けば、2024年の訪日外国人消費額は8兆円に達する可能性があります。

また、2023年10-12月期の消費額は1兆6,688億円（2019年同期比+37.6％）で、四半期としても過去最高を記録しています。

2）1人当たりの旅行支出

2023年の訪日外国人（一般客）1人当たりの旅行支出は21万2,193円（2019年比+33.8％）となりました。2023年10-12月期においては21万8,201円（2019年同期比+28.0％）と、さらに増加しています。

3）消費傾向の変化

インバウンド消費には「モノ消費」と「コト消費」があり、近年は「コト消費」の需要が高まりつつあります。日本文化体験ツアーや日本食を楽しむなど、体験型のサービスを求めて来日する外国人観光客が増加しております。

「モノ消費」：日本のお土産やブランド品の購入など

「コト消費」：日本文化体験ツアーや日本食を楽しむなど

4）地方部での消費の拡大

訪日外国人の消費は、三大都市圏だけでなく地方部でも拡大しています。2023年の外国人延べ宿泊者数のうち、地方部は28.5％を占めており、2019年と比較して16.0％増加しています。これは、地方の観光資源や体験型観光への関心が高まっていることを示しています。

5）2030年政府目標

訪日外国人旅行者数は、直近の伸び率で推移すれば、2030年の政府目標である6000万人も視野に入る状況となっております。訪日外国人消費額については、訪日客数が直近の伸び率で推移し、さらに高付加価値化と泊数増加を図ることにより、2030年の政府目標である消費額15兆円も視野に入る状況です。

３．インバウンド対策及びインバウンド消費の特徴

観光業界各社は、これらの変化に対応しつつ、インバウンド需要の回復と国内旅行の活性化を最大限に活用することで、さらなる成長が期待できます。

訪日外国人旅行者による消費は、日本の地域経済を活性化させる重要な要素となっています。2023年の訪日外国人旅行消費額は過去最高を更新し、地方部での消費も増加傾向にあります。

・多言語対応：Webサイトの多言語化など、情報発信の充実

・情報のローカライズ：各国の文化に合わせた情報提供

・体験型サービスの充実：日本独自の文化体験や食事体験の提供

・ムスリム対応：ハラール対応の飲食店や宿泊施設の情報提供

１）インバウンド消費の特徴

「モノ消費」から「コト消費」へのシフト：日本文化体験や食事体験などの体験型消費が増加しています。

・多様な消費ニーズ：ムスリム観光客向けのハラール対応など、多様な文化背景を持つ観光客のニーズに対応することが重要です。

・デジタル化の進展：多言語対応のWebサイトやアプリの重要性が高まっています。

・地域経済活性化への貢献

訪日外国人による消費は、以下のような形で地域経済の活性化に貢献しています：

・宿泊施設の稼働率向上

・地元飲食店や小売店での売上増加

・観光関連サービス業の雇用創出

・地域の伝統工芸品や特産品の需要増加

・交通機関の利用者増加

２）「コト消費」への対応

近年、訪日外国人観光客の間で「コト消費」の需要が高まっています。これは、日本文化体験や食事体験などを重視する傾向を指します。デジタルマーケティングを活用し、以下のような施策が効果的です：

・体験型ツアーのオンライン予約システムの整備

・多言語対応の観光情報アプリの開発

・バーチャルリアリティ(VR)を活用した事前体験の提供

・SNSを利用した口コミマーケティングの促進

そのなかで、日本文化を体験するツアーが人気を集めており、これらの体験は観光の大きな魅力となっています。外国人観光客に人気の文化体験には、以下のようなものがあります：

・着付け体験

・茶道体験

・食品サンプル作り

これらの体験は、単なる観光地巡りでは得られない、日本文化への深い理解と思い出に残る経験を提供しています。

4．まとめ

インバウンド消費は、日本政府の目標である2030年に訪日外国人旅行消費額15兆円の達成に向けて、重要な役割を果たすことが期待されています。デジタルマーケティングを効果的に活用することで、以下のような効果が見込まれます：

・訪日前の情報収集段階からの顧客獲得

・滞在中の消費行動の促進

・リピーター増加による安定的な需要の創出

・地方への観光客誘致による経済効果の分散

インバウンド消費とデジタルマーケティングの融合は、日本の観光産業の発展に不可欠な要素となっています。今後も技術の進化と消費者ニーズの変化に応じた戦略の構築が求められるでしょう。

訪日外国人旅行は、新型コロナウイルスの影響から徐々に回復し、今後さらなる成長が期待されています。日本政策投資銀行の調査によると、コロナ終息後に海外旅行したい国として日本は高い人気を誇っており、特にアジアでは1位、欧州豪では米国に次いで2位となっています。

今後の訪日外国人旅行の予測について、以下のポイントが挙げられます：

・コロナ終息後の訪日旅行需要の高まり：一時的に訪日旅行ができなくなった外国人観光客が、コロナ終息後に日本を訪れる可能性が高いとされています。

・円安傾向による割安感：現在の円安傾向により、外国人観光客にとって日本への旅行や買い物に割安感が生まれる可能性があります。

・「コト消費」の増加：従来の「モノ消費」に加え、日本文化体験や日本食など、体験を重視した「コト消費」の需要が高まりつつあります。

・多言語対応の重要性：インバウンド消費を拡大するためには、Webサイトやサービスの多言語化が不可欠となっています。

これらの要因から、コロナ終息後のインバウンドの回復には大きな期待が寄せられています。特に、宿泊、観光、飲食、航空、鉄道、小売といった産業において、インバウンド需要が直接的に収益に影響を与える可能性が高いと考えられます。

参考：

DBJ・JTBFアジア・欧米豪 訪日外国人旅行者意向調査

国土交通省 観光白書 令和元年版