10億ドル規模に急成長する高齢者観光市場。業界大手の参入激化へ

10億ドル規模に急成長する高齢者観光市場。業界大手の参入激化へ

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高齢者観光は近年、市場規模の急成長により、将来性のある大ヒット分野となっており、投資家の中でも人気を集めています。中国の高齢化傾向が強まる中、「銀髪族」の観光ニーズはかつての「有れば満足」のものから、旅行中に贅沢で完璧な体験を追求するスタイルへと変化を遂げました。現在の中高齢者相関業界の事情は本稿で紹介します!

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Part1:高齢者観光ブーム:細分化された顧客層によりビジネス拡大

2019年、観光学部から卒業した许义氏が大手OTA(Online Travel Agency)会社を退職した後、新しい観光産業サービスプラットフォーム「谱见文旅」を創立しました。現在、「谱见文旅」は観光情報発信・マーケティングの他、観光コンサルティング、観光オペレーションなどの事業を展開し、一万社以上の観光産業相関会社と10万人以上のユーザーにサービスを提供しています。

许义氏は「50代、60代が中高齢観光市場の消費者となるにつれ、中高齢者観光産業に対する需要は爆発し、中高齢者旅行産業には大きな可能性が秘めている」と述べました。

中高齢者観光の需要から見ると、Douyin、视频号(テンセント傘下ショットビデオプラットフォーム)、小紅書などのSNSに慣れている現在の五十代・六十代の「新高齢者」は収入レベルが高く、強い消費活力があります。彼らは中高齢者観光産業の発展基礎をしっかりと作っています。

中高齢者観光業の供給から見ると、業界内の中高齢者に向ける旅行パックツアーやサービス供給については非常に限られており、全業界を統治できる企業はまだ存在していないということです。「現在のところ、目にするのはただ地域的なプラットフォームであり、前例のない規模で中高齢者観光に対する需要が拡大している中、業界内の企業同士はお互いに直接的な競争をしていない」と许义氏が述べました。

中高齢者業界を長期にわたって発展させるために、今の中高齢者観光業の従事者たちの問題点は二つあります。それは「商品設計」と「ユーザー獲得」の問題です。問題解決には「お客様中心」のアプローチを採用しなければならないです。

许义氏は「商品設計の面では、中高年ユーザーを細分化し、異なる年齢層、消費水準、旅行経験などの違いによって、彼らの旅行好みと特別なニーズを発掘しなければならない」と述べました。

例えば、中高年の体力に配慮し、時間と旅行リズムを適度に調整し、中高年層の食習慣に応じた食事サービスを提供し、車の中に医療用品の用意、中高年の社会生活や文化に基づき、中高齢者のお客様の精神面のニーズに応えることが肝心です。

上海の一部の企業はカラオケと琴棋書画の四芸で中高齢者に向けの「日帰り旅行」や「パーティー式旅行」商品を提供しています。こういう中高齢者の集まりは心理的な癒しを与え、许义氏の観点から見るとこれも旅行商品の一つとされています。

最近、新東方グループは自社の打ち出した「教養のある、講義できる、教えてくれるガイド」によって中高齢者観光に進出し、中高齢者観光業界「上級サービス不足」という欠点を補足しました。

大都市に住む中高齢者の所得水準が高く、豊富な旅行経験も持っています。彼らは基本的なサービスだけでは足りなく、より差別化された彼らの個人需要を満たせるカスタマイズ商品が必要です。このようなニーズはますます高まり、徐々により広範囲の都市へと移行していくでしょう。

ユーザー獲得の面から見ると、顧客獲得チャネルの多様化が進み、SNSによる顧客獲得がますます重要になっています。中高齢観光の従事者は、コンテンツの創作能力やマーケティングに対する直感を積極的に培わなければならないです。

许义氏は「中高齢者のお客様の顧客獲得については视频号をマーケティングの重心に置くのは賢いです。第一に、视频号では高齢者の視聴者が集中しています。第二に、视频号はまだ成長初期段階にあり、企業にとって顧客獲得が比較的容易です。」と述べています。

视频号だけでなく、「小紅書」のようなプラットフォームにおける中高齢者層ユーザーも拡大しています。多くの旅行会社が「小紅書」に旅行コンテンツを上げることで、中高齢者お客様を獲得しています。

中高齢者観光のマーケティングチャネルが多様化する一方で、オンラインだけに頼っていては不十分であることを強調しないといけないです。高齢者顧客獲得の鍵は、依然としてオフラインでのコミュニケーションとサービスは切り離せないものです。

「中高齢者へのサービスの核心は、感情上の信頼関係です。彼らは、人と関わる前に、その人を信頼する必要があります。この点は他の年齢層の人と異なる重要な特徴です。ですので、中高齢者観光をオンライン内容の創作に集中するだけでは不十分であり、オフラインでのコミュニケーションによって信頼関係を築く必要があるという結論に至ります」と许义氏は語りました。

この点から、中高齢者観光分野でより大きなブランド影響力を生み出すためには、今後、オンラインの限界を脱却することが不可欠となりました。

许义氏「そのためには、商品の革新、マーケティング能力を加え、時間と資金も必要です。」

Part02.「新高齢者」の性格変化:参加者からリーダーへ:

2019年4月に成立された 「跟我玩文化传媒」は現在、山西省で唯一の「公共メディア」と「産業サービス」を組み合わせた分野横断的な会社です。「公的メディアに会員制システム」、オンラインとオフライン両方のアプローチを活用し、中高齢者層ソーシャルシーンを作り出していました。

当社は四十代の日常生活に焦点を当てて、中国初の「旅行ガイドをテレビ番組化」を試し、山西省に住む中高齢者に強い影響を与えています。

この旅行番組は、これまで3回のリニューアルを経てきました:

2014年から2019年までのバージョン1.0では、司会者の視点で視聴者に代わって旅行に行きました。2019年から2020年までのバージョン2.0では、中高齢者の「素人KOL」が中心となって旅をし、その体験を撮影し記録しました。2020年からは、「跟我玩」が中高齢者のツアーグループの旅行体験を撮影し、放送番組として制作したバージョン3.0へと進化を遂げました。

「跟我玩」の創始者である趙明氏は、「最初に高齢者観光客に、どこに行き、どのように楽しさがあるかを案内するにはアナウンサーの専門知識が必要でした。その後、中高齢者の「オピニオンリーダー」の多くは国民に対しての強いアピール力を持っており、彼らはより良い行動方法を知っています。

現在のバージョン3.0では、中高齢者のツアーグループと一緒に旅をし、彼らの経験を通じ、彼らのフィードバックを番組制作に生かすという、より実践的な経験に近づきました。番組放映後、より多くのツアーグループを募集することができ、より市場志向の番組となりました」

中国における深刻化しつつある高齢化のトレンドとスマートデバイスの普及に伴い、「新高齢者」のキャラクター変化は明白となっています。彼らは受動的な参加者から能動的なイベント主催者へ、部員からリーダーへ、舞台観客からスポットライトの下へと進化していきました。

これを受けて、中高齢者観光産業のマーケティング戦略も、かつての「分散化」から、社会的関与とコネクティビティを重視しました。

趙明氏は、「私たちは中高齢者の方々に『番組を見てください』と伝えているわけではなく、『番組に出てください』と伝えているのです。現在、テレビのマーケティング価値は低下しており、高齢者が自由に自分をアピールできる舞台としてテレビを使いたいのです。」と語りました。

「跟我玩」はこのような考え方の転換に基づき、「旅の主人公」を目指し、旅に情熱を燃やす中高齢者を掘り下げるようになりました。

今年、中高齢者観光MCN(マルチ・チャンネル・ネットワーク)の構築を目指し、「スター・アンカー・プログラム」を始めました。

趙明氏は、「現在の中高齢者層は、自分を表現し、経験を分かち合うことを好み、人からの注目や評価を求めています。私たちは、情熱的で表現力豊かな中高齢者を選抜し、彼らに事前にスキルトレーニングや、ビデオ制作後のサポートを提供し、彼らの活躍を支援します。これにより、シニアや高齢者が旅行中の体験を撮影し、さらには商品のプロモーションを行うことができます。」と述べています。

これは中高齢者観光業界における新たなビジネスモデルです。中高齢旅行者が求めるカスタマイズされた旅行体験を満足させるだけでなく、彼らにとってよりオープンなプラットフォームを作り出し、彼らの経験した旅の様子をみんなと共有することで、彼らは「観光達人」となれます。

現在、「跟我玩」は約30人の中高齢者「インフルエンサー」を募集し、基礎技術を集中的に指導しています。これらの中高齢者は主に「跟我玩」の会員出身で、定年退職後の段階で、旅行と自己表現の両方に情熱を持っています。将来旅行中の撮影やライブを行うために、独自のDouyinアカウントを作成する予定です。「跟我玩」の公式アカウントも全面的にオープンし、前述した中高齢者のインフルエンサーが制作した高品質のコンテンツをメインとして公開しています。

もちろん、「トップ・インフルエンサー」になるのは簡単ではなく、個人の資質と継続的な努力、そして運も必要です。しかし、多くの素人中高齢者にとって、彼らの目標は「スーパーインフルエンサー」になることではないです。仲間内で影響力のある「マイクロKOL」になることで、一定の商業的利益を得ることを求めています。

「新高齢者」の役割が参加者から指導者へと移行するにつれ、中高齢者の出演が徐々に増えていることは明らかです。今後、中高齢者層の声が遠くへ届けられるようになり、中高齢者観光業界全体の成長が加速していくことが予想されています。

Part03. 「一騎討ち」すれば敗れるー成功の鍵は「組織的な運営」

観光業界の「重資産」サブセクターとして、中高齢者向けの長時間旅行サービスは、コロナ禍の3年間でさまざまな困難や予期せぬ事態に直面しました。

コロナ禍によって多くの高齢者向け生活関連企業は撤退を余儀なくされ、いくつかの企業は経営に苦戦しました。ホテルと民宿の移行を計画していた企業も行き詰まりました。

「今年、業界は若干の回復の跡を見せたが、全体的な供給規模は実際には縮小しており、多くの中核となるビジネスモデルを破壊されました。」

「今、高齢者の旅行需要が急増していますが、以前の住み慣れた物件は消え、どこに行けばいいのか分からず、困惑しか思わない」と、光大汇晨日康文旅の総経理、曾涛氏はそう語りました。

22年に設立された光大汇晨日康文旅は、長年の高齢者ケアサービスの基礎の上に築かれ、光大グループと密接に関連しています。光大グループの「銀保養」(銀行・保険・養老)の相乗効果を活用し、専門的な高齢者介護と旅行のプラットフォームを作り上げました。

光大汇晨日康文旅のターゲット顧客は、定年退職した健康な高齢者ですが、あらゆる年齢層の人々にサービスを提供しています。光大汇晨日康文旅の中核事業は、高齢者向け療養施設の運営、高齢者向け商品の開発、高齢者向け生活コミュニティの運営、高齢者向け生活会員制度の確立などです。

曾涛氏は、マクロ的な視点から、高齢者生活産業の今後の発展の鍵は、供給側の組織的な運営にあると考えています。

中高齢者の退職と消費意識の変化に伴い、中高齢者向け生活支援業界には大きな成長の余地があります。

しかし、シニアリビングは資本・資源集約な業界で、参入障壁や運営上の課題も比較的高いです。個人の運営している高齢者向け住宅施設は、不安定な顧客獲得、限られた商品提供、一貫性のないサービスといった問題にしばしば直面しています。このため、当初は「シニアリビング」と位置づけていた施設の多くが、養老施設という「古道」に逆戻りすることが多いです。シニアリビングというコンセプトを維持することが難しくなるのです。

曾涛氏は、「中小企業が運営している単独の施設の欠点を補完するには、より専門的で安定したプラットフォームからの支持が必要です」と指摘しました。その鍵はより強力なリスク抵抗力を持つ供給システムを構築し、業界の実務者に力を与え、業界発展のための協力を形成することです。

第一に、統一された業界標準を確立し、質の高いユーザー体験を生み出さなければならない。

標準化は、高齢者向け生活プラットフォームにとって中核的な競争優位性の一つであり、業界全体の根強い悩みの種でもあります。

現在、シニアリビング企業は一般的に独自に運営されており、統一されたサービス基準がないため、顧客からの苦情が多発しています。

光大汇晨日康文旅のシニアリビングプラットフォームは、伝統的なホテル、高齢者介護施設、ウェルネス不動産など、異なる属性に基づく物件を、対応するシニアリビング商品ラインに合わせて調整・変換し、価値を増幅させます。

第二に、シニアリビング・プロジェクトのレイアウトを多様化し、さまざまな地域をターゲットとしたカバーネットワークを確立なければならない。

より多くのシニアや高齢者の顧客を惹きつけ、シニアリビング・プロジェクトの持続可能な発展サイクルを生み出す鍵は、その地理的分布にあります。

何よりもまず、事業者は彼ら(中高齢者の顧客)にとって魅力的な場所を用意する必要があります。なぜなら、第一に、高齢者は探索欲を満たし、健康の発展を望んでいます。第二に、高齢者は毎年同じ場所に行きたがらないです。彼らには、さまざまな目的地が必要なのです。

供給システムの確立と発展は、シニアリビング業界の全体的な質を高め、集客、運営の標準化、商品の多様化といった課題に取り組む助けとなります。これは最終的に、より大きな経済的利益につながっていきます。

シニアリビング業界は、大きな可能性を秘めています。

プラットフォーム事業者がリソース統合のリーダーとして行動し、中高齢者に対し多様な老後の選択肢を提供する必要があります。シニアライフを選択する退職者が増えれば、供給・需要両方が繁栄になります。

「中国シニアリビング業界発展報告書」によると、中国におけるヘルスサービス産業の規模は、11.5兆元を超えると予想されています。中国が2035年までに世界最大の健康・ウェルネス経済になる可能性が高いです。

最近、文化観光部・工業情報部・国家衛生委員会は、高齢者観光の発展を促進し、高齢者の多様な観光ニーズによりよく対応するため、「高齢者観光の典型事例の選定に関する通知」を発表しました。

元記事: 千亿银发旅游市场大爆发:供不应求,巨头抢滩

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