豆乳と油条の高級化は良いビジネスアイデアですが、儲けることができるかは不透明です。かつての人気店舗「桃園眷村」は路上の朝食スタンドを高級な環境に持ち込み、成功を収めましたが、一般人にとっては価格が高すぎます。消費者は品質に見合わない高価なものには支払いたくない現在、ブランドは価格を下げ、消費者の需要に合わせる必要があります。本文は「桃園眷村」の盛衰について説明します。catalyst-crossing編集部が中国現地メディアの記事を日本語でお伝えします。
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かつて「朝ごはんは路地裏の屋台しか楽しめない」のイメージを覆し、朝食の豆乳と油条をメインとする人気店「桃园眷村」は、現在、4店舗しか残っていません。
「桃园眷村」はハイブランド「LV」の店舗の隣に立地し、高額な賃料を支払いながらも、豆乳、油条、焼餅、おにぎりなど、最も普通の家庭料理を提供しています。
2014年12月、「桃园眷村」は上海泰州路に約400平方メートルの店舗をオープンしました。豪華な内装、1人平均50元の価格、そして、初めてLVの隣に開店した「朝食店」のマーケティングにより、「桃园眷村」は「朝食業界のエルメス」と称されるようになりました。
かつて、「桃园眷村」の朝食料理を食べるためには、2時間半待つことがよくありましたが、現在、店の前で人だかりの光景が終焉を迎えました。このかつての「初代の網紅店」は、現在、全国範囲内の店舗閉鎖に巻き込まれています。
一、「老舗」に成れない「網紅店」
2014年、「桃园眷村」上海の初店舗がオープンした際、記事「LVの隣で開業した朝食店が上海で人気爆発、2時間並んででも一口食べたい」が話題を呼び、「桃园眷村」が一気に人気店となりました。
これにより、飲食業界にはかなりの衝撃が走りました。なぜなら、国民的な朝食料理のブランド化を果て、さらに高価で販売でき、SNSで話題化ができたからです。
急速に人気が高まったことで、2017年には「桃园眷村」は君联資本と明耀資産の投資家の注目を浴び、「A輪融資」(シリーズAラウンド)も完成しました。
店先の並んでいる長い列、店内の写真を撮っているお客様、SNSでの話題拡散……間違いなく、桃园眷村は「網紅店」としての要素を持っていました。
しかし、現在、「網紅」という言葉は貶義語になっており、常に進化し続ける飲食業界では、多くの「網紅ブランド」が篩い落とされ、砂のように消えてしまいました。
「桃园眷村」も例外ではありません。現在の人気が衰えただけでなく、店舗の閉鎖も頻発しています。ピーク時には全国で40店舗以上あった「桃园眷村」も、現在では上海1店舗、成都2店舗、厦門1店舗のみが営業しています。
「桃园眷村」の最大市場である上海で、かつて14店舗もオープンしていました。
実際、2021年には既に、「複数の地域での桃园眷村が営業停止となった」というニュースが報じられ、残っている店舗も客席利用率も10%に満たない営業困難の状況に遭い、店員数が顧客よりも多い状況が続いていました。
「界面新聞」によると、「企查查のデータによれば、桃园眷村は上海眷飨达餐饮管理有限公司により経営され、この会社はすでに『法人の高額消費が制限された』、『株式凍結』、『被執行人』などのラベルが付けられています」ということです。
時代の過ぎ去った店が、今やこのような状況に陥ってしまったことは、4店舗が必死に支えている現状を見ると、唏嘘させられるばかり他には言えません。
二、負けだらけの「ハイエンドの朝食スタンド」
初期に「桃園眷村」が注目を集めたのは、「反差感」の位置付けによるものです。
「反差感」というのは、「桃園眷村」が「一線」や「二線」の大都市で、来訪客の多い人気高級ショッピングモールに店舗を開き、このような150-200平方メートルの大きな店舗には、小資(シャオズ、中国にいる中流富裕層で、若く高学歴で結構の収入を得ているホワイトカラーのこと)のテイストにし、店のメニューに乗っているのは豆乳と油条の雰囲気です。お客さんが店に入ると、この「反差感」にすごく感動されます。そして、上海でも最も高級なモールで、朝食店がオープンしたことも非常に面白いです。
商品の定価について、「桃園眷村」は確かに「朝食界のエルメス」の名に応じて価格を設定しています。例えば、油条は1本8元(約160円)、豆乳は「新鮮さ」、「甘さ」の違いによって10元から18元(約210円から380円)、焼餅は1つ22元から32元(やく460円から670円)、小籠包は1食46元から88元(約960円から1840円)の価格で設定されています。 このような路上の簡素な「朝食スタンド」と比べて数倍高くなっていた価格は、上海などの「一線都市」でも「高いし、コスパも低い」というコメントが寄せてきます。特に、多くのお客さんは「桃園眷村」の豆乳と油条を試した後、「普通の豆乳と油条」と評価したり、「味が不味くて、路上の朝食スタンドさえに劣る」と述べたりしています。
「桃園眷村」の創業者は、誰も飲食業に精通していませんかもしれませんが、マーケティングには必ず精通しています。
その中の1人であるパートナーの程輝は、かつて4A広告会社のクリエイティブディレクターを務めたこともあり、これらのユーザーを最も理解している人々によって創立された「桃園眷村」のマーケティングが上手であること当然です。
最初に、「桃園眷村」が狙ったお客さんは、都市暮らしのホワイトカラーや小資、ブームに載る人々でしたが、彼らは情報拡散の力を持ち、話題の作り出しにも上手です。
そのため、「桃園眷村」の店の隅々、雰囲気、装飾のすべてを、SNSコンテンツ投稿・共有のために築き上げました。
つまり、店内の全要素がSNSでシェアできるようにしました。
たとえば、お客さんが豆乳を飲み終わると、お椀の底に「あなたのために、この身を捧げます」という言葉が現れます。
この「あまのじゃく」のマーケティング手段は、多くの消費者を引き付け、自発的に写真を撮ってSNSに投稿し、不意の間で広告が拡散されました。
さらに、焼餅1つにさえも工夫し、サラダ、ポークカツ、マグロなどの台湾料理の要素を入れました。
他には、「桃園眷村」各種類の食品に竹串が刺され、擬人化し、まるでそれらも思考と感情を持っているかのように生きている個体です。
今の一般人のお客さまにとっては、あまのじゃくすぎる要素が多すぎるかもしれませんが、小資やブームに載る若者にとって、このようなマーケティングが非常に魅力的です。
「この時期には、高級感を提供することが、美味しさよりも重要だと信じています。スタートアップ時期のスターバックスのように、ターゲット客を把握し、彼らのロイヤルティーを維持しなければなりません。」
スタートアップ時期の「桃园眷村」は、飲食業界の一番基本的な要素である「美味しさ」を考えていなかったため、消費者の評価は賛否両論でした。
しかし、当時の飲食業界において、ネットで有名になるには欠けないのが「ギャグ」だが、「料理の美味しさ」というわけではありません。
「桃园眷村」は、その「ギャグ」を作ることに非常にうまかったと言っても過言ではありません。
例えば、北京店がオープンした際には、香港からプロの獅子舞団を招き、まるで香港映画「黄飛鴻」の現場にいるかのように、観客が大いに楽しんでいました。
端午節には、門店ごとに「屈原」に扮装した店員が、周囲の人々が見物に集まるようにし、観客の撮った写真でネット上に話題を巻き起こしました。
しかし、マーケティングで有名になった「桃园眷村」は、ここ数年、消費者に驚きをもたらすことができず、最初の店内の写真撮影体験もなくなり、食事の機能だけが残っています。
これは「網紅店」の経営にとって衰える始まりであり、これら飲食業界の「基本的なルール」である美味しさに依存しない「網紅店」は、お客さんのブランドに対する新鮮味が経営に特に重要であり、新鮮味があればこそ、店が継続的に新規顧客を引き付ける能力が向上し、リピートビジネスが可能になります。
しかし、近年以来、「桃园眷村」の商品の差別化が出来なくなり、他の「網紅店」と比べ「桃园眷村」の公開した「毎月の新商品」は明確な特色がないし、新商品の発表頻度もかなり遅れています。「桃园眷村」公式アカウントの記事によれば、「桃园眷村」の新商品が小籠包や牛肉麺などのような革新性のない「一般商品」であり、2023年に全年間公開した新商品は「米酒」(マッコリ)だけでした。
こうすることで、一旦消費者の好奇心が満たされない時、ブランドの注目度が低下し、そのようにして「網紅」の属性を失い、消費者はもはや自発的にブランドをピーアールすることもしません。
したがって、「桃园眷村」がこれ以上「新鮮味」を提供できない時、お客さんも徐々に納得しなくなり、リピート率は大幅に低下します。
三、料理の高級化は決勝の一本槍?
豆乳と油条の高級化は、良いビジネスのアイデアですが、儲かるビジネスとは限りません。
路上の伝統的な朝食スタンドを高級なショッピングセンターに持ち込んだ「桃園眷村」は、伝統的な朝食メニューを高級化することに成功しました。しかし、一般の人々にとって、豆漿と油条は「平価」の食品だけです。
多少の割増しは受け入れられますが、価格が高すぎると誰も受け入れられないです。
豆乳と油条は一般的な朝食メニューであり、高価でもその価値を表現できません。したがって、一人当たり30〜40元は受け入れ可能ですが、100〜200元までに値上げすると、誰でも買うわけがないです。
一般の人々にとって、豆漿と油条は高級食品ではなく、高価であってもそのままの「朝食」だけです。
消費者は一時的な新鮮味を追求するかもしれませんが、常連客になることはできません。
品質が価格に見合わない場合、それは消費者にとって愚かな買い物となります。
一食50元近くする朝食は一般の人々が長期的に消費できるレベルではありません。
LVなどのハイブランドが買える人々でも、50元の豆乳と油条を必ず買うことはありません。
「桃園眷村」の台頭と人気は、中国の「消費のアップグレード」のトレンドに応じたものであり、消費者は「品質」の体験のためにブランドのプレミアムを受け入れるようになっています。しかし、現在の経済の不景気には、「消費の低度化」が主流となり、無駄な出費を避ける傾向があります。
ブランドのプレミアムに対しても、消費者はより慎重で厳格になり、盲目的に行動しません。
2023年の「618消費新趋势洞察報告」によると、約60%の人々がより合理的に消費モデルに転換したいと考えています。現在、消費者は各選択肢を比較し、より慎重に行動を行います。この背景の下、各ブランドも「消費の低度化」に適応し始めています。コーヒー・ティードリンク業界では、「瑞庫大戦」がコーヒーの価格を9.9元までに引き下げました一方、トップタピオカブランドの「喜茶」、「奈雪の茶」でも価格が下げ続けており、両者は更なる価格の引き下げを進めています。
「網紅店」は一時的なものであり、その「新鮮味」が終わると、本物は「高級な外観」だけのことがバレます。
真の飲食業者は、美味しい料理とリーズナブルな価格で、心を込めてサービスを提供し、消費者に満足感を提供なければならないです。これが「網紅店」から「老舗」への転換の道です。
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