日系企業の海外進出はまず台湾から!ベクトル台湾単独インタビュー:海外市場へ進出をする上で「市場認知度向上」がカギ

日系企業の海外進出はまず台湾から!ベクトル台湾単独インタビュー:海外市場へ進出をする上で「市場認知度向上」がカギ

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マイクロアド台湾は台湾で創業して既に11年目を迎える。これからは顧客・パートナー企業と共に前進し、消費者に満足を与えながら、世界を股にかけた販売成功を実現していきたい。本文では、株式会社ベクトル台湾にインタビューし、今後の台湾へ進出する業界の動向について詳細分析と提案を行いました。

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毎日、爆発的な量の情報に晒されている現代社会において、パブリック・リレーションズ(Public Relations)という言葉は人々の日常生活に溶け込んでいる。日本最大手のPR会社である株式会社ベクトル(Vector Inc.)は2014年、台湾に株式会社ベクトル台湾(Vector Taiwan,香港商維酷公共關係諮詢國際股份有限公司台灣分公司)を設立した。PRに関するサービス提供に加え、消費者の認知度向上からブランド全体のマーケティングプロジェクト支援と提案を行い、多くの日系ブランドの台湾市場進出を成功させている。ベクトル台湾の木下研生総経理は、今回のインタビューで最初に台湾を選んだ理由のほか、日系企業が台湾へ進出する際に直面する各課題や困難についてもお話をいただくことができた。また加えて木下総経理自身の12年におよぶ海外在住経験に基づいて、今後の台湾へ進出する業界の動向について詳細分析と提案を行っていただくことができた。

【写真1】ベクトル台湾の 木下研生総経理(写真提供:マイクロアド台湾)

台湾進出時に遭遇した3つの困難:PR領域の人材採用、メディアリレーション、異文化を理解した働き方

木下総経理は台湾を進出先に選んだ最大の理由はグループ内の台湾顧客数が最も多かったからであり、これを土台にあらゆる角度から評価を行った後に進出を決定したことを明かしている。PRを主なサービスとするベクトル台湾は進出当初は想定より順調ではなく、ゼロスタートだったことから発生したいくつかの困難点を共有した。1つ目は台湾でPR領域向けの人材を募集することが非常に困難であったこと、2つ目はメディアリレーションシップの構築に課題があること、そして3つ目は台湾人と日本人の働き方の違いである。

木下総経理はPR業界で最も重要なものはコミュニケーション能力であるが、加えて記事作成力や日本語能力を兼ね備えた方は極めて少なく、日本語力の高い人材を多く抱える台湾においても最適な人材を見つけることは難しいということを明かした。株式会社ベクトルは日本でも高い知名度を誇っているが、台湾進出当時は知名度が低く、メディアリレーション構築には長期的な業務提携が必要であり、また知名度向上のチャンスは唯一具体的な案件獲得&提供であり、それらを経て時間経過と共にメディアも徐々に理解を深め互いに信頼するようになる。木下総経理は募集プロセスにおいて、チームに対しての日本と台湾の文化上、認識上の違いを理解してもらうことに骨が折れたことを強調した。チームメンバーがこの違いを理解できるよう、チームとは基本的にLINE上でも非常に細かなコミュニケーションをとり、声の掛け方や話し方でさえも工夫をしてコミュニケーションをとった。木下総経理は、「海外市場へ進出拡大するにあたって、最も基本的なことは文化と認識の違いを覚悟することです。画像と文字による情報伝達は非常に重要だと認識しています。言葉だけに頼ると相手が正しく理解しているか判断が難しいのです」と指摘する。

日本で成功したブランドは、台湾においても成功するチャンスにあふれている

中国、台湾など海外で合計12年間在住している木下総経理は各国各地の「人の違い」を十分に感じている。中国では北京、上海、内陸部でも差違が顕著であり、中でも北京や上海の人達は人間関係と仕事において非常にストレートであるのに対して、台湾人は性格が柔らかく、人間関係においては「より日本人の感覚」に近く、日本企業が台湾を重要な進出検討の対象とする理由の一つであることを強調している。

木下総経理は、企業とビジネスの本質は「問題解決」であるという近年の見解を述べ、ある製品が日本で既に成功したのならば、それは台湾においても大きな成功のチャンスを秘めているという仮説を述べた。さらにこれまで接してきた日系企業の顧客は海外のマーケティングに対する理解がまだまだ浅いことを説明した。「日本市場は小さいから海外進出が必要だと言われたことは過去もありましたが、人口2,300万人の台湾市場と比べて、日本の市場は人口が1.2億人であり、非常に大きいです。市場売上で言えば、台湾は日本のわずか5分の1に過ぎません」と指摘している。日本市場にはあるが台湾市場ではまだ整備されていない状況が多く、その中には流通構造の違いや消費者の思考モデルがある。台湾消費者の基本的な思考モデルには「なんで自分は同じメーカーを継続的に使ってるんだ?もっと他のメーカーを見て、良さそうであれば買ってみよう!」という比較検討の思考が多く存在しており、これは一般的な日本消費者の購入モデルと比べて大きな違いがある。木下総経理は台湾に進出した多くの日系ブランドはこういったような市場調査が不十分なため、進出後の売上に結びつかず、最終的には撤退を余儀なくされていることを強調した。進出する市場認識の違いが原因で進出に失敗することは非常にもったいないことである。

【写真2】マイクロアド台湾の 丸木勇人総経理(写真提供:マイクロアド台湾)

「日本和牛」を認知させて每年11億台湾ドル規模の市場を創造

現在、日本和牛は台湾人にとっても既に高級食材の代名詞となっているが、5-6 年前に「日本和牛」が初めて台湾で解禁された際には誰も関心を持っていなかった。当時台湾人にとって和牛は馴染みがなく、多くの飲食店では和牛の扱い方や料理方法さえわからなかった。木下総経理は「日本和牛」という言葉が台湾で知れ渡るようになったのは、ちょうど5-6年前にベクトル台湾がこのPR案件を受注した後のことがきっかけだったと明かしている。木下総経理曰く、「当時私たちは企業側と消費者側の大きく2つの方向性に分けて宣伝を行いました。企業側に対しては部位の切り方から保存方法まで多くのレストランのシェフの皆様にお集まりいただき、毎週現場で研修を行いました。消費者側に対しては和牛の認知度を高めることに専念しているとき、台湾人がお鍋の料理を好むことに気が付き、日本和牛と鍋が合うことを人々の認識に植え付けることにしました」和牛の位置づけを高級食材に絞り込み、KOL やメディアで繰り返し露出させたことで、5年が経った現在「日本和牛」は既に台湾人の中では高級食材の象徵となっており、台湾での消費市場の規模は国別で見た際の世界第4位となる每年11億台湾ドルに達している。

インタビューの最後に、木下総経理は我々に「PRとは『認知の改変』と『認知の拡散』」であることを説明し、従来のメディア露出とは異なり現在のPRはデジタル化が進み、メディアのニュース以外にも個人のSNSやAPPが隆盛を極めていると話した。台湾の大きな強みは、実際の人口は2,300万人と少ないものの繰り返し認知され宣伝されることで認知度を高めることができることだ。木下総経理はこう強調する。「マーケティングの最終ターゲットは消費者であり、故にブランドの成否は『消費者』のことを理解できるかにかかっています」。企業にとって商品の入替と販売は時には失敗を産むが、重要なことは時間経過と共に失敗率が減り、成功率が高くなることであり、これが最も貴重で欠かせないことだと木下総経理は考えている。

マイクロアド台湾の丸木勇人総経理は台湾市場における商品発売とPRはスピード感と低コストが重要であると説明している。例として、「買一送一(買ったらもう一個プレゼント)」のような販促手法は台湾企業が頻繁に使う販売戦略であり、このような戦略は消費者満足度を最大限に高め、価格と満足度との間の平衡点を見つけることができる。丸木総経理曰く、「他国と比べて台湾は『スピード感』について非常に特殊です。日本では新商品開発及び量産はメーカーにとって時間を費やす非常に大きな決定となりますが、台湾ではわずか数か月で新商品の宣伝と発売を行います。このスピード感と極めて効率性の高い市場環境によってメーカーは消費者の求める満足度と、それに付随したマーケティング予算のバランスをとることができます。」、丸木総経理はこのスピード感への適応能力こそがまず台湾市場独得の要素であると強調している。

【写真3】左からベクトル台湾の木下研生総経理、マイクロアド台湾の丸木勇人総経理(写真提供:マイクロアド台湾)

マイクロアド台湾は台湾で創業して既に11年目を迎える。これからも顧客・パートナー企業と共に前進し、消費者に満足を与えながら、世界を股にかけた販売成功を実現していきたい。

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